某所でWEBセミナーを開く建築計画ソフトのi-ARM。メーカーは「建築設計プラットフォーム」という、正直????な名称でこのソフトを表しています。メーカーがそれじゃ駄目でしょう!ということで、なまあず日記styleが説明します。
まず、このソフトは2015年11月に発売されました。当時は国産BIM(当時GLOOBEに次いで2番目の国産)ということを大きく喧伝しその方向で開発されていました。しかし当時の状況を思い出しても(すぐ試用しました)、とてもBIMとはいえず、モデリング機能もとても貧弱でした。とても買おうとは思えない状態で、実際ほとんど売れていなかったと思います。そして先行するBIM各社がどんどん開発を進め、差を詰めるどころか、どんどん差を開いていきました。
そこで方針を変えたのか?2018年にVer2が発売されました。さて、ここでBIMという方向性を諦めたのか?建築計画のソフトに大転換します。具体的には同社の建築計画統合ソフトのLAB-SSの機能を取り込み、そのまま後継ソフトにしてしまうという大転換でした。LAB-SSは、日影・天空率・斜線・日射量計算などの統合ソフトで、非常に多機能なソフトでした。それぞれの機能がプロフェッショナルで、日影は逆日影、天空率は逆天空率をサポートし、建築可能空間をはじき出す有能なツールでした。日影も時刻日影図・等時間日影図だけでなく、日影チャート図、日差し曲線図、壁面日影などをサポートしており、日照・日射シミュレーションもできるなど、通常のツールよりも一段踏み込んだソフトでした。このソフトの機能をi-ARMに移植しいって、そのまま後継ソフトにしようと考えたようです。
確かにLAB-SSのユーザーインターフェイスは古めかしく、BIM時代の入力には向きません。他社BIMソフトには劣るものの、軽快に3Dのモデリングができる最新のi-ARMのユーザーインターフェイスなら、作業効率が一気にあがりますし、i-ARMにIFC読み込み機能があるので、他社BIMからデータを読み込み検討!という目的で購入検討する方も増えるなど、メリットも大きいです。逆に、国産BIMというアピールを消し、事実上のLAB-SSの後継という非常にわかりにくい立場のソフトになってしまったのも事実です。事実、BIMソフトとしては認知されていないばかりか、建築計画ソフトとしての知名度も低いままです。そもそもLAB-SSもそこまで知名度が高いわけでもありませんでしたから。
ちょっだけ、ネガティブなことを書きましたが、そんな理由で知名度が低い説明なのです。では、使って見た感じ、メリットなどを書いていきます。
・BIMとして新たに開発したものなので、モデリングの操作性は良好。ビューも充実しており、入力したモデルの確認も楽です。そして機能が重装備でないこともあり、比較的動作も軽快です。
・強引にLAB-SSの機能を内包したため、モデリング部分の操作性とうまく統一が取れていない部分がありますが、そもそもパラメータは構造計算ソフトに比べて簡易なこともあり、操作に慣れるのは非常に短期間で可能です。検討などはスピーディーにできます。
・やはり多機能。LAB-SSに加えて、居室の採光・換気・排煙の確認、防火防煙、避難経路などの機能も追加されています。ここまで多機能な建築計画ソフトは他社には存在していないので、貴重な存在といえます。
・価格は、年間10万とわかりやすいです。オプションも特になしです。特に初期投資が少なく済むのがメリットです。長期利用者のための割引のある3年版、5年版も発売されました。
・BIMデータなど読み込み、変換にも使えます。IFCはもちろんST-Bridgeも読み込めます。他にスケッチアップやRhinocerosのファイルも読み込み・書き込みができるのは大きなメリットです。
逆に知名度・商品がわかりにくい以外での欠点・問題点は、
・価格。初期価格がなく年会費のみというのは、メーカーにとってはユーザーを考えたものと思っているかもしれませんが、やはり2年目以降が高いです。一年間使用料が10万円(月9000円)のソフトにはまだなっていない感じがするのは、全機能をくまなく使うユーザーが少ないからです。逆に全機能をくまなく使うユーザーにとっては、間違いなく安価なので評価が難しいです。本来ならコア部分以外は、オプションで追加、というのが本来の姿なのですが、全部使えるよ、ということがウリなので、何とも言えないですが、誰対象?というのがわかりにくいです。
・BIMとしては力不足。モデリングも建物全般と考えると力不足で、パース用途では難しいです。建築計画時にはある程度コマンドも揃ったな、と思いますが、これ一本で実施設計まで・・・はどう考えても無理。同社公式WEBショップでも「3次元建築設計システム」と残しているわけだから、もう少しがんばって欲しいところです。ただLAB-SS的に使うのであれば、十分過ぎると思います。あとは機能統合がどこまで進むか、という点でしょうか。
・ソフトウェアプロテクト方式。このソフトは、他の建築ピボット(DRA-CADを除く)のプロテクトとは違い、ライセンスを簡単に解除し他のパソコンで使うなどがやりにくいです。DRA-CADは各パソコン毎で良いかもしれませんが、特殊な機能満載のこのソフトでは、各担当が使いたいときに、パソコンを切り替えて使うことも想定されます。そのためHOUSE-DOCなどと同じプロテクト方式の方が向くのでは、と感じます。
あと、私の周囲からの問い合わせ、追加機能については、
・早く省エネ計算ができるモジュールを付けて欲しい。オプションで構わないので。
・このパッケージで省エネ計算が用意されていないのは不思議。
・そもそもBIMなのか?はっきりして欲しい
・今後のロードマップをはっきりして欲しい
今回、講習会を開くにあたって、何のソフトか?を説明したうえで、上記のような意見が出ました。まあメーカーも分かっていると思うのですが、とにかくわかりにくいです。なので、積極的にわかってもらう活動が必要だと思います。
まあ、ここまで書いて、このソフトをもう少し知りたい方は、メーカーホームページ(これがまたわかりにくい・・・)をご覧ください。