WOOD-STファーストインプレッション

46条2項ルートの木造構造計算ソフトWOOD-STが届いたので、ファーストインプレションです。予定通り11月頭出荷でした。初回注文分は皆様の元に届いていると思います。

本当に見分けがつかない外観

WOOD-STの最大の特徴は、従来難しいとされた壁量計算によらない46条2項ルートの構造計算をHOUSE-ST1同様の入力しやすいユーザーインターフェイスで実現したことだ。SS7やBUS-6といったRC造の一貫構造計算ソフトは、昔に比べれば非常に操作性が向上していますが、やはり操作に習熟するのに時間がかかります。その点、WOOD-STは、グラフィカルな画面というだけでなく、HOUSE-ST1で積み上げた操作性を採り入れており、計算部分はともかく操作で戸惑うことが非常に少ないです。画面が似ているHOUSE-DOCやHOUSE-省エネといったソフトと比べてもはるかにHOUSE-ST1に酷似しており、ちょっと見には見分けがつかないくらいです。

また屋根入力、見つけ面積入力、CAD下図機能など主立ったHOUSE-ST1の便利な機能も搭載されています。これらの操作性も同じなのでHOUSE-ST1のユーザーは迷わず乗換、併用が可能だと感じます。

方杖やK形ブレースは表示で再現できる

はい。きちんとモデル通り再現できます。入力設定もシンプルでモデル化しやすいですね。凝ったことができない反面、設定や入力が簡単なのがいいです。

スキップフロアは各階の間に一層配置することができます。HOUSE-省エネのように層を挿入する形です。高さは自由に設定できます。数値で指定するため、グラフィカルに設定できないのが残念ですが、意匠検討が終わっているなら特に問題はありません。

母屋下がりなど立面的非整形、3階上のペントハウス、トラス屋根の解析などには対応していません。平面的な斜め軸には対応していますが形状的には比較的シンプルなものが得意なようです。

ややわかりにくいリスト関連とK-DB

各部材は、ソフト自体に実装されておらず、基本的にK-DBを通しています。K-DBや構造システムのBUSやDOC-RC/SRC、SNAP、MED-3などの構造計算ソフトで共通に利用できる構造系データベースです。メーカーからみれば管理が一元化できて間違いなども起こしにくく良いシステムですし、ユーザーから見ても複数のソフトを利用しているのであればメリットを享受できます。もっとも単体で使う場合、2つのソフトをインストールしなければならないなどデメリットもあります。

WOOD-STは、木材や金物でデータベースを利用しています。そのためHOUSE-ST1のように樹種などを登録する必要はほぼありません。コレは便利です。金物は、テックワンとプレセッター(SUも)を利用できます。わかりにくいのがソフト毎に使えるものが違うこと。例えば、MED-3で使えるテックワンP3プラスは今のところWOOD-STでは使えないこと。

細かいことを考えなければ、細かいパラメーターの入力を少しでもしなくていいのは大きなメリットです。将来性も含め柔軟な対応ができるk-DBに接続できることのメリットも今後でてくると思います。

秀逸なHOUSE-ST1からの変換機能

一番上の画面キャプチャはHOUSE-ST1のデータをそのまま変換したものです。屋根の形もきちんと伝わりましたね。荷重なども再設定不要です。耐力要素は自分で置き換えなければなりません。自動変換したままだと、各耐力要素は、壁倍率を基準耐力に置き換え、その耐力要素全体の耐力として算出します。壁の長さで計算していた人はかなり戸惑うと思います。ただこの方式のおかげで、傾斜によって耐力が変わるブレースや、柱自体に取り付く方杖なども適切にモデル化できます。構造用合板のみ使っている場合は、告示の耐力で問題ないならだいたいの数値として目安になりますが、筋かいも倍率で変換して方向は無視しているので、こちらは危険です。HOUSE-ST1から変換する場合は筋かいを使わない方が無難です。といってもすぐに目安の耐力がわかるのは非常に良く、46条2項の必要耐力に慣れていない人には耐力目安がわかるので非常にありがたい機能です。

各要素の表示を切り替えられるのは便利

HOUSE-ST1を使っていると梁サイズとか表示して欲しいな~と思うのですが、WOOD-STはパラメーターが多いので、常時画面に表示することが可能です。項目もある程度カスタマイズで来ます!!この機能は本当に便利です!!HOUSE-ST1に早く搭載してほしいものです。

計算書もシンプルで見やすい

計算書は、HOUSE-ST1のように画面で見やすい形式です。各項目にクリックで飛べるので見たいところをすぐに見ることが出来ます。計算書内容は見やすくわかりやすいのですが、やや枚数は多め。新しい分野のソフトなので見やすさを優先したようです。応力図は小さな物件なら見やすいですが、ちょっと大きめになると見にくくなるのが難点です。RC造に比べて部材数が多くなりがちなので、今後も改良を続けていって欲しい点の1つです。

RC造・S造の構造計算ソフトを使いこなしている人にとっては見やすいでしょう。木造の新グレー本準拠の構造計算ソフトから見ると、総合的な壁量の表がない(壁量計算がないので当たり前)、金物の引き抜き図がない(フレームで・・・)とか戸惑いますが、1つ1つ丁寧に見ていけば大丈夫です。

改善してほしいところは?

改善して欲しいところは、サンプルがとにかく貧弱です。とりあえずスキップフロアや方杖など入力事例にはなっているものの、現実的な建物モデルではありません。またサンプルは一個しかありません。計算や耐力設定が難しめなソフトなので、できれば3例くらい欲しい所です。

HOUSE-ST1で便利だった機能が一部ないのも気になります。二次部材の計算はありません。計算書のエラー表示機能は貧弱で最初は計算書のどの部分にエラーがあるのか?わからないほど。一応、ST1で好評な伏図にエラーやワーニングの表示は出るのですが。計算書のCAD変換もできないので、補助計算書や、構造図を作るときに不便です。入力モデルの梁伏図と軸組図はCAD出力する機能はあるのですが、これだけだと構造図を描くときに不足感があります。恐らくHOUSE-ST1を元に作ったわけでは無く、一から作ったソフトをHOUSE-ST1に思いっきり似たユーザーインターフェイスを被せたのでしょうから、今後、HOUSE-ST1で好評な機能は搭載していくと思います。

また基礎の計算がないのが非常に残念です。開発はしているようなので後日搭載なのか?オプションなのか、いつぐらいにリリースされるのか?知りたいところです。

今後に期待!!

新製品ということで、これからどんどん発展していくと思います。印象として非常に操作性が良い反面、どうやって設計していくのか?がわかりにくいところがあります。ここはより一層のヘルプやサンプルや設計資料の充実などで補っていただければ、と思います。

まだ機能は不足していると思いますが、現状でもかなり実務に使えそうな手応えです。私も数個モデルを作りましたが、木造2階建ての狭小スキップフロアの構造なら30分程度でモデル化できました。これはST1と同レベルです。個人的には大規模というより、ちょっと凝ったスキップフロアのある狭小住宅や、間口が広いショップなどの構造設計に威力を発揮すると思います。高倍率耐力壁や方杖といった要素はそういったものに親和性が高いと感じます。他の木造構造計算ソフトからの乗換もそんなにハードルは高くありません。ともあれ、新グレー本の構造設計に限界を感じた方、S造やRC造から木造に移行したい構造設計者にお勧めです。

WOOD-STの主な仕様

 一部で話題になっていました木造構造計算ソフトWOOD-ST(構造システム)の概要がわかりましたのでお知らせします。準拠基準は、グレー本系ではなく、木質構造設計規準、混構造手引、2015構造関係技術基準解説書です。その点では普通の住宅を主眼に置いているのでは無く、ちょっと複雑な形状の建物を想定しているようです。HOUSE-ST1が住宅系、WOOD-STは非住宅なのかな~と思ったらそうでもない。なかなか説明が難しいソフトのようです。

 恐らく、壁倍率を使って計算する46条から青本、グレー本と壁量計算系の考え方で設計するのがHOUSE-ST1であり、応力解析(壁床は主に等価ブレース置換)による自由度の高い考え方で設計するのがWOOD-STなのでしょう。事実パンフレットには施行令46条第2項第一号によりルート2までの3階建て以下の木造建築物を対象にしていると明記しています。というわけで壁量計算除外ルートであり、壁量計算はできないものとみたほうがいいでしょう。もっともHOUSE-ST1のデータはインポートできるみたい(どうやってやるのかは謎!たぶん柱・梁の形状のみ??)なので、両方もっていれば併用も可能かと。某ショップでは既にセット商品を企画しているとか、いないとか・・・。

 同じようなコンセプトのソフトとして、アークデータ研究所のASTIMがあります。非常に柔軟な自由な形状の解析を目指したソフトです。あそこまでの自由度はありません。HOUSE-ST1の操作性能良さをうまく採り入れ、ルート2までの木造3階建て木造建築物の構造計算を行おうというもののようです。確かにASTIM・ASCAL挫折組の話は聞きますからね・・・。それに構造システムには任意形状の解析を行えるFAP-3とその断面計算のMED-3を組み合わせれば同様のことは実現できますので、あえて任意形状にはこだわらなかったのかもしれません。

 注目の金物構法ですが、登録済みの金物は、カネシンのプレセッターSUとタツミのTEC-ONE P3のようです。当然、木ブレースや鉄筋ブレースなども解析できるようですので、高倍率の木ブレースなども使えると思います。金物の性能を管理するシステムは、構造システムのBUSやFAPなどでもお馴染みのk-DBなので、同社のユーザーはとっつきやすいかもしれません。方杖やK形ブレースなど建物に応じて柔軟に設計できそうです。

面白いのは、スキップフロアに対応したこと。壁倍率に寄らず解析します。中間階を配置することでスキップフロアのある建物を入力出来るのでモデル化も手軽です。ASTIMほど柔軟ではありませんが、よくある木造構造計算ソフトのスキップフロア対応のような中途半端な仕様(詳しくはユーザーやメーカーに聞いてみてください♪)ではなく、一般ユーザーが想定しているようなスキップフロアを実現できそうです。

大規模系なのかな~と思ったら平面グリッドはHOUSE-ST1などと同様で、グリッド配置です。最大150グリッドなので、特別大きな建物を想定しているわけではなさそうですが、必要十分そうです。

FAP-3との違いは任意形状ではない点、断面計算機能も内蔵している点でしょう。FAP3に断面計算ソフトMED3を一緒に買うより安いです(私のようにFAPMEDもっている人はどうすれば良いんでしょう汗)。手軽な反面、きちんとした構造の知識なしで使うと、エラー要素の意味がわからないだけでなく危険な建物を設計しそうです。応力図は見やすそうなので、良かったです。構造計算書はどうなのか?期待ですね。

現時点では基礎に対応していないこと、屋根は解析モデルに考慮されない(荷重伝達はできる)ことなど、確認検査機関の対応で突っ込みがありそうな気がしないでもないですが、任意形状を使いこなす自信がなく、一貫機能を持った任意形状も・・・という人にはわかりやすいシステムで支持を得られると思います。価格的にはHOUSE-ST1より高い価格設定ですが、高価な木造一貫計算ソフト程度の金額になりそうな見込み。定評のあるHOUSE-ST1のユーザーインターフェイスを使っていることもプラス材料であり、非常に楽しみですね。

もちろん新製品ですので足りないところはあると思います(断言)。果たしてルート2、46条2項ルートというニッチな部分にどれだけ設計者が注視するのかも注目です。先行するASTIMはルート3対応が噂されていますし、STRDESIGNなどの既存の木造住宅構造計算ソフトもグレー本対応ながら設計できる形状は進化してきています。これから木造構造計算ソフトを購入しようとする人は益々悩まされることになりそうです。

某本舗の次世代の木造計算ソフト導入は、ASTIMに決まりそうでしたが、WOOD-STも有力な対抗馬になりそうです。ASTIMにしろWOOD-STにしろ、応力解析ができなければ利用できませんし、自信が無い方は今から勉強しておくことをお勧めしておきます。

木造構造計算が技術者には不人気?

個人的に木造の構造計算って工学的判断という恐ろしいものによって恐ろしい設計になりがち・・・と考えていたのであまり追いこんで考えず、余裕を持たせて・・・というのが持論です。ただいろいろな形状に挑戦したり、かなりギリギリ設計を行ったり、耐震等級3を必須にしたり・・・さまざまなチャレンジを聞きます。でも全体的に見たら構造技術者の中では木造は不人気だな~と感じます。

それでも昨年のCLT告示の制定などで、木造に注目が集まっているのか?木造構造計算ソフトの開発については、いろんなところで各メーカー模索しているようで、試作品や怪しげな情報も含め情報が入ってきます。私が担当者から聞いたもので有望だな~と思ったのは一貫構造計算ソフトからの転用の木造構造計算ソフトで、形状の自由さ、保有への対応も含め面白い試みだな~と思いました。まあ元々転用している人いますしね。非常に魅力的!だったのですが、まだ本格開発・・・というわけにはいかないようで、出るとしてもまだ先の話です。ルート3対応は各社頭を悩ます部分のようで、東京デンコーのように木造耐震診断の精密診断法2を転用しているものもあります。そーいえばルート3に対応のソフトが他の会社からももうすぐでるとか。任意形状からの転用の話も聞きますが、なかなか難しいようです。理想はどんな形状でも入力したら解析!!というモノらしいですけど、角度によっては金物取り付かないし、SketchUPで納まり書いてから・・・という慎重さがないと難しいかと思います。

構造計算結果(3D)内に、実際の納まりなどを詳細に書ける3DCADが含有されているソフト(もしくはそう思えるようなアドオン機能)を強く求めます。計算結果と、その納まりの因果関係を覚えさせ(これは設計者がやること!)、過去に出てきた納まりは自動変換してくれるとかあるとかなり楽かな。間違えてやった場合は目をあてられないけど。入力すれば構造的に安全な建物が設計できる、と思っている人が未だ多いのですが、本来のモデルとかけ離れていて、強引にモデル化、というのも今の時代では受け入れられないと思います。