木造で構造計算する意味は建物のバランスを正確に把握することにもある

KIZUKURIからHOUSE-ST1に構造計算ソフトを移行すると、偏心率が見やすいということが大きいです。KIZUKURIの場合数字だけ出ていますから(印刷帳票にもでていますが画面上では確認できない)。重心と剛心の位置、偏心率0.15や0.3の限界ラインも表示してくれます。

さて、意匠設計者の壁量計算書をたくさん見せてもらいました。大雑把に壁量を計算しただけのもの以外に、偏心率を限りなくゼロに近づけて、きちんと設計していますアピールをしてくる方も多かったです。疑問なのは偏心率の計算の仕方。壁量計算レベルではそんなに高い精度がでないので、あまり意味がないかと。

それが構造計算だと精算できます。重量をきちんと入れられるからです。もっとも追加荷重のようなものなので、棟先の高さまでは補正されていません。そのあたりは応力解析ソフト系と異なりやはり万全とはいきません。

これは2段階に屋根が落ちる片流れのモデルです。HOUSE-ST1では3D表現できるものの、母屋下がりなどは表現できません。なので重量で補正はしてあります。このモデルの場合は妻側壁が階並みに大きく荷重が重いのに対し、母屋下がり側は荷重が非常に少ないです。このようなモデルでは重心は大きく移動します。それにともない剛心距離も均等な平面モデルに比べて変わってきます。

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2階の偏心率です。赤は重心です。やはり大きく左に寄っています。。それに対し剛心は右に寄っています。そのため偏心率が許容されるエリア(緑のエリア)が左に寄っていて、偏心率が大幅に悪化しています。このモデルは左右で耐力壁の強さは同じですので、重量バランスが変わらなければ建物真ん中ラインに重心は来るはずです。さて、この時点での偏心率は0.127。建物の偏心率としてみた場合悪くない数字ですが、0と思って設計していたら衝撃的でしょうね。もっとも母屋下がりした時点で、水平剛性の確保はどうするんだとかツッコミどころが多いのですが・・・。

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1階の偏心率です。やはり重心が左に寄ってしまっているのですが、その影響は軽微です。よって偏心率も0.31とかなり良い数値となっています。2階の重量が均等に載っているため、妻壁の影響が割合的に軽減されたからでしょう。それでも重心位置はずれています。今回のような単純なモデルならこの程度で済むかもしれませんが、実際は間取りで壁の位置はかなり流動的です。この程度の動きでも影響が出てこないとは否定できません。

最近、ネット上でも雑誌でも耐震性は耐震等級3が必須みたいな流れや、木造2階建てで構造計算しないのはありえない、とか言われています。ちょっと過激すぎ、とは思います。しかし実務で普段から構造計算していると、耐震診断3や構造計算という言葉が1人歩きしているようで、もっと、その内容を伝えないと理解されないな、と感じてしまうのです。

なのでまずは、このようにわかりやすい構造計算ソフトを導入して自分なりに建物を入力してみることをお勧めします。建物の挙動がわかりやすくなります。今までは数字でしか出ていませんでしたが、HOUSE-ST1でもCEDXM転送に対応しましたので、手軽に無料の建物振動アニメーションを作れるWallstatに転送できます。転送して揺らしてみると、上記のようなことを実感するために追加の事項が必要で、その事項をきちんと入力すると、意外と揺れが変わってくることに気がつきます。これは構造技術者でなくても体感できるので良い方法だと思っています。

Wallstat利用者に、変形した屋根形状の荷重を補正せずに利用している人を見かけます。確かに屋根の形状入力は解析に関係ないのですが、今回の建物のように重量バランスが悪い物は補正しないと駄目です。あくまで営業的に使うならともかく、技術的に良い物を作ろうと模索するのであれば、構造計算から学んで、Wallstatで再現してみるといった作業が大切なんだと思います。

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