10倍の耐力壁

木造の場合、地震や風に対抗する耐力壁の倍率の上限は施行令で5倍と決められています。これは46条壁量計算の場合で、構造計算を行う際は関係ありません。グレー本では換算7倍までOKでありますが、それも法律で決められていないのできちんとした検証と計算が行われていれば、10倍相当も可能でしょう。実際、構造計算ソフトのなかではデフォルトで10倍入力が認められているものもあります。個人的には施工がシビアであり、材質が不均一な木造にあっては高倍率は向かないと思っているので、あまり感心がなかったのですが、テックワンP3プラスの解析をやっているうちに、感心が高くなりました。テックワンP3プラスのチラシには10倍相当の耐力壁というのが書かれていますし。

しかしこの倍率になると非常に多くの検討しなければならないこと、施工的な制約がでてきます。普通に考えても短期の引抜きがすごいだろうな~とか、先に木材が割れたりしないだろうか??とか。難しく考えると、各部材が壊れないように、いろいろ検討するのは結構大変・・・ということも。計算上持つからといって、普通の軸組の中にポン!って入れるのは危なすぎるな・・・と感じます。

しかしながら、世の中、通常の工法で普通に10倍壁を使う構造技術者がいるのです。もちろんきちんと検証して・・・ならいいのですが、構造計算ソフトに数字だけ入力してOKだから大丈夫!的な安易なものは危険を感じます。

釘の本数で構造用面材の耐力壁の倍率をコントロールできることは、比較的よく知られています(あくまで構造計算のお話し)。釘を密に打つ事によって高倍率の耐力壁を計算上は実現できます。実際住んでみたら大丈夫なの??と心配になるものもあります。

特に狭小住宅の場合、壁不足に陥りやすく、高倍率壁を配置しますが、非常に揺れやすいです。これは高倍率壁の影響なのか?物理的形状の問題なのか?いろいろ議論されるべきことですが、そんなところに更に高倍率である10倍が入ったら・・・。

建物の強度は壁倍率だけではわかりません。数字合わせ的に耐震等級3を取得する例も多いですし、実際何が真実か?わからないときがあります。数字は数字、現実は現実。設計者はそのあたりに再び気がつかないといけない時期に入っていると感じます。