木造金物計算の今昔

 私が、構造計算を学んだ頃、kizukuriというソフトで計算していました。(今もそうですけど)。その頃は、「3階建て木造住宅の構造設計と防火設計の手引き(絶版)」という本を参考に計算していました。青本と呼ばれていますね。しかしその頃既に新しいマニュアル「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」が発行されていました。ただ難解であるため、青本が長らくスタンダードとして使い続けられました。
 その計算の違いの一部に、金物計算があります。青本では存在応力で計算されていました。ルート1なのだから当たり前と言えば当たり前。鉄骨造もそうなんです。だから何の疑問も感じませんでした。存在応力とは、応力計算によって実際に構造物各部に生じている応力で、木造構造計算での金物計算の場合、風か地震で強い方の応力によって求められていました。建物が法的な限界に達したときに、一部金物が限界に来るような設計です。つまり倒壊時に金物も限界にくるという設計法です。無駄のないスマートな設計と思っていました。しかし新しい設計法では、壁の限界時の必要金物を求めることになっています(許容耐力時)。当たり前ですが、存在応力より許容耐力のほうが大きいです。なぜなら存在応力は短期のギリギリの基準点なのに対し、許容耐力は設計時の耐力です。普通ある程度余裕を持たせて設計しているのでなおさらです。だから金物が過剰と思えるくらい発生してしまいます。これを過剰という方もいると思いますが、確かに耐力壁が最大限性能を発揮するためには、この方法は正しいと思います。ただ評価方法が正しいかは別です。
 この新旧の金物設計法で対峙したのが某振動台実験だったわけで、あのとき果たして、金物が先に壊れたのか、壁が先に壊れたのか興味がありますね。
 構造計算で金物を少なく設計するというのは青本時代の話。N値計算も構造計算も理論が同じになった今、構造計算では適正な金物を算出するという方向に変わりつつあります(それでも節約にはなるのですが)。金物以外で引き抜きをうまく処理できる一般的な方法が見つかれば、変わってくる可能性はあります。研究はいろいろ進んでいるようですが、是非一般の設計者が広く使える方法を公開・告示化して欲しいものです。