構造屋の愚痴

 構造屋が辛いところは、世間一般的な見方と実態が非常に乖離していることです。最近、工務店から「基準法改正で構造屋は認められて良かったですね」といわれました。私は首をひねりました。「認めてなんてもらっていると実感している構造屋はほとんどいませんよ」とだけ答えました。「仕事が増えていいねえ」といわれることも多いですが、実際は消耗戦。利益なんてあがりやしません。何よりも確認申請がおりないので収入がなくなりつつある構造屋も多いのです。
 全国的に産婦人科医が減っているそうです。訴訟になりやすいし激務ですし。医者の数は総数では増えているのに。おかげで出産に支障が出てきているそうです。いくらやりがいがある仕事でも、その待遇や環境が整わないと結局うまくはいかないです。構造屋も同じ側面を抱えています。
 最近、構造計算をやってくれ、という問い合わせが激増しています。同業者からも声は聞こえます。全体的に手間ばかり増えて従来の仕事すらこなせないのが現実です。また数多くのベテラン構造技術者が今回の件で愛想をつかせ引退していったということもあります。現状では設計は非常にリスクを抱えるので静観している構造屋もいます。
 現在の構造屋はその腕を上げるチャンスを取り上げられています。国からはレベルアップを要求されますが、そのための講習はお粗末そのもの。週毎に様々な指示が国からくるので、その対応に追われています。未だわかっていないこともあります。もともと大手が少なく、零細が多いので、同業者同士で情報交流も行われない業界なので各ノウハウも共有できません。それだから次世代を担う構造技術者の育成も難しい状態です。産婦人科医と同じく入ってくる人が少ないうえに育成も難しいのですから将来が思いやられます。
 などと愚痴っても仕方ないか。次の世代に希望を持ってこの業界に入ってこれるような環境を作ること。これが私の使命なのかもしれません。