木造住宅が建たなくなる??

 一般の方とその業界の方の常識というのは、往々にして異なるものです。私も建築業界に入ったとき、この業界の特殊性に悩まされたものですが、今では慣れてしまったようです。
 一般の方に聞くと、木造2階建て住宅が構造計算されていないことは「おかしい」と感じるようです。
 この業界の常識はともかく、木造の構造計算って実は非常に難しいのです。特に規制がかからなかった木造2階建ては様々なバリエーションがあり、その工法に合わせた構造計算というのは不可能なものも多く存在しています。そもそも構造設計の理論自体がまだまだ発展途上(安全性は確保できるようになりましたが)である上、木という自然物をを取り扱うという難しさもあり、なかなかうまくいかないです。
 インターネット上では、木造2階建ても「構造計算が必要になるのでは?」と行き過ぎた?議論もあります。私も構造計算はしたほうが良いと思っている立場の人間です。しかしそれをすべて、と考えると行き過ぎと考えるのが自然でしょう。
 構造技術者の数は非常に少ないです。しかも木質構造に詳しい人間は構造技術者の中でも一握りです。計算だけをソフトを使ってやる設計者もいますが、木質構造を理解しているとはいえない方も多いです。そこに膨大な数がある木造2階建ての構造計算が法的に義務付けられたら家は本当に建ち難くなるでしょう。
 そもそも、建築設計に使う頭と構造計算に使う頭は異なります。ドイツのように、意匠と構造別の資格にするのが良いと思います。日本のように同じ建築士という資格でやるのは無理があります。日本の構造技術者の中には一級建築士でない方も多いのも理解できないでしょう。しかし現実には多く存在します。今回の法改正で期待していたのは構造の専門の資格ができることでした。しかし現実は違いました。ただでさえ難しい一級建築士の上に構造の資格を載せるようです。構造に向く人の中には建築一般に向かない人が多く存在します。まったく違った職能を同じ資格内に納めることの弊害を予想してください。ただでさえ人口が減り技術者も減るのに、せっかくの能力を活かせなくなる可能性もあるのです。
 といってみても、法律は施行されました。この法律内でどうやって良い方向にもっていくか?建築業界の力量が問われています。法律だけでは世の中は良くなるわけがありません。実際に良い方向に持っていくのは、「ひと」の力です。