木造住宅の設計をしていると、構造、意匠を問わず壁倍率という言葉が出てきます。しかし建築士にこの意味を聞いても答えが返ってくることは稀です。
壁倍率とは、日本で一番建築されている数が多い一般の木造2階建て住宅を設計するさいに、いちいち構造計算すると面倒なので壁倍率という明確でわかりやすい単位を作成し、その量によって建物の強さを判断するものです。壁倍率の1倍とは、横からの加力時に頭部の変形量が階高の1/120の時の耐力が、壁長さ1mあたり130kgであるということです。 これが650Kgなら5倍というわけです。今はニュートン単位系に移行しているので1mあたり1.275kNという表記になっています。ちなみに現在、構造計算や品確法の耐震等級で使われている壁倍率1は1.96kNで、基準法とは異なっています。これは、現行の木造住宅の各階の許容水平耐力は耐力壁の負担分が2/3で残り1/3は非耐力壁部分(雑壁、垂れ壁など)が負担しているという前提からです。よって雑壁が少ない場合、基準法の耐力壁を充足していても耐力不足!ということがあるのです。ですから設計者は数字合わせだけでなく、こういった根拠を知った上で設計しなければならないのです。
ちなみに1/120というのは3mの階高で上部が水平に2.5センチの変位です。新耐震以前は5センチ(1/60)で良かったようですが、地震の被害より改訂されたらしいです。残念ながらそのころは子供で記憶と実感がないですね。