構造計算ソフトの恐ろしさ

 一般に勘違いしている方が多いのですが、構造計算は構造設計の一つの手段でしかないということです。よく計算通りに設計していないと悪いような言い方をされる方がいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。逆に構造計算ソフトで入力し計算結果通り設計したら安全か?というと、必ずしもそうではありません。
 最近の構造計算ソフトはユーザーインターフェイスが優しくなったので、簡単にマウスで入力できるものも増えています。入力だけだったら誰でもできます(出来ない難解なソフトもあるが)。そして構造計算ソフトに建物の形を入力するだけで簡単に計算できる・・・と思ったら大間違いです。
 というのは、構造計算でチェックできる事項は、建築基準法の一部であり、すべてをチェックできるわけではないからです。勿論、テキストに出てくるような整形な建物であればほぼ問題ないかもしれません。しかし我々が日々担当している建物は形状も荷重も複雑で、なかなかテキスト・計算ソフト通りにはいかないの現状です。そういう場合は必ず構造の知識、力学の知識、施工の知識、設計経験が必要になります。ソフトを購入したからってすぐに計算できるわけではありません。
 しかし、構造力学が分かって構造計算の仕組みがわかり、構造計算ソフトを入力できるからといって実務ができるとも限りません。例えば木造の構造計算ソフトの場合、入力すれば梁の寸法は自動で出てきますが、このままの寸法で作れば安全か?といえばそうとも限りません。施工を知っていれば当然、梁の欠き込みは、梁毎に違うことを知っているだろうし、小さな梁に大きな梁がかからないことは知っています。また建築基準法による最低限の条件だと木材はたわみが大きく、特に大スパンになるとたわみが厳しい上、木材独自の性質による長期間でのクリープ現象も考慮しなければなりません。このあたりは計算ソフトは特に考慮してくれません。やはり経験と材料に関する詳しい情報をもっていなければなりません。大臣認定のソフトも同様で様々な条件を満たさないとヘッダーが出力されないので、その条件を満たさない場合の検討はやっかいですし、条件を満たさないケースも多数存在するのも事実です。
 最近、よく思うのですが、非常にディープな世界です。しかもきちんと行っても地震や台風で絶対大丈夫!といいきれない部分があることは非常にもどかしいです。少しずつ成長しているとは思っているのですが先は長いと感じる今日この頃です。

作成者: しろなまず

建築設計やっています。スマホやソフトウェアが好きです。