構造設計で大事なもの

 構造設計で大事なのは安全性だというのは当たり前。でも構造設計で大事なのはそれだけではありません。まず大事なのは経済性。経済設計が悪のようにいわれていますが、それは真実ではありません。確かに経済性の追求は悪い方向に向かい、昨年の耐震偽装のようなことが起こってしまいます。しかし地球上の限られた資源を無駄に使うのは良くありません。建築基準法では日本で発生するであろう大地震の規模を定め、その地震に対して安全かということを確認するために耐震強度を定めています。もちろんそれは「最低の基準」なので、求める性能によって強度を定める必要があります。しかし自然の驚異は人知を超えています。絶対に大丈夫な建物など建設は不可能です。また建物は大丈夫でも周囲のインフラが駄目なら、数日で生活が干上がります。そのあたりのバランスを考えながら設計しないと生活が不自由になったり快適な生活が損なわれることになります。
 そのバランスを考えながら設計するのですが、快適やデザインを追及しすぎる設計者にあうこともあります。また経済性だけを追求するお客も多いです。結局家を建てる人で地震に対する安全性を第一に考える人は少数派です。同じく環境を考えて太陽電池を入れようとする人は多いですが実際に導入する人はわずかです。結局目に見えない、または切迫していない事象に関しては、後回しになってしまうようです。
 でも構造設計者なのだから、同じ予算で同じプランでより強い建物を設計しようという技術と姿勢は大切です。構造設計者によって構造設計もいろいろ。だから構造設計者を選ぶことは非常に重要です。しかし今のところ意匠設計者の下請けの構造設計者を選んでいるというのが現実です。なかなか選べません。客に指定されることはまずありません。今後はそのようなケースも増えるかもしれないですが、そしたら別な問題も出てきます。いつも慣れた気心の知れた同士であれば可能なことも、知らない構造設計者と意匠設計者が組むと難しいことが多いのです。私の場合、知らない意匠設計者とのコンビの仕事が多く、顔をみたこともない人と組むのはざらで、中には声も聞いたことがない人と組むことがあります。やはり難しいです。地域性の違いがさらに困難度を上げてしまいます。そのあたりに悩むことが多くなってきています。
 それ以上に大事なのが人としての心。倫理。正義心。当たり前のことが当たり前でなくなったこの世の中。初歩的なことから始めなければなりません。