今後の住宅設計業界に望むこと

 社員にほとんど土日出勤させない事務所なのに、今日は新人に出勤指令。来週は二級建築士試験なのに本当に申し訳ない。まあ本人も家にいるとサボり気味のようだし、平日の夜もコツコツ勉強しているようなので心配はしていないが。深刻なのはこのところの仕事超過。私がきついのはいつものことだが、社長もきつそうだ。主に建築スタッフがいないことが問題なのだが、建築スタッフの募集にはなかなか応募がない。私の理想は構造専門化なのだが、長年地元で設計事務所を開業してきた手前、それは出来ないのが現状。経営者としては非常に難しい局面。
 理想の構造専門とは、デザイン専門の事務所や工務店でデザインその他は設計してもらい、我々がその内部の構造を設計し監理するということだ。通常の設計事務所や工務店は構造以外に神経を集中でき、よりよいものが出来ると思うのです。昔はすべてに詳しい建築士というのが存在したが、設計・施工が非常に高度化したこの時代では、それは難しいことです。ですから設計・監理の分業化は不可避です。もちろんビルや大きな建設物では現在でも当たり前のように行われています。しかし住宅レベルではいまだ実現はほど遠いのです。それは小型住宅専門の構造設計者が不足していること、ローコスト化が進み設計監理にお金を割けないことなどがあります。仕事がなければよい技術者は育ちません。割にあわない設計料しかもらえないなら誰も参入しません。しかし現在の建築業界への不信を解消するためにも住宅でもシステム的に分業化する仕組みが必要です。
 このことには業界の変化も必要ですが、一般の住宅を建てようとする方々も、溢れている情報のなかから真実を見極める目が必要だと思います。私は住宅メーカーを批判するつもりも、建築士事務所を批判するつもりもありません。建売だって批判しません。しかし人が住宅に要求するものは千差万別で一つのメーカーや建設会社がカバーできるものではありません。住宅は商品ではありません。メーカー製の住宅を商品と思っている人もいますが、厳密に言えばそうではありません。同じ家など存在しません。同じ形の家は建売ではあるかもしれません。しかし隣家の環境、風景などは異なります。そんなことで洋服や家電を選ぶのとは違うことなのです。価格もべらぼうに高いですし。しかし選び方は難しい。情報は溢れていますが自分に本当に必要な情報などそう簡単に手に入れられないことを自覚するのに時間はかかりません。
 ですから、家を手に入れることを総合的にアシストする専門家の育成が不可欠だと思います。現在は不動産屋さんや銀行がその役割をしている場合があります。しかし利害関係で選びがちなので、そうではなく完全に独立したアドバイザー的な存在が必要だと思います。この知識には建築だけでなくローン、住まい方、人生計画まで総合的に相談出来るレベルに到達できなければなりません。また、それに対して適正な報酬が支払われる仕組みと社会的風潮が必要だと感じます。
 正直、建築士の数は過剰だと思っていました。しかしまだまだ建築士が活躍できる機会や役割、場面は多いと思います。まだまだ建築に憧れて業界にくる若者も多いです。もっといろいろと活躍できる場を用意することも必要なことだと感じます。