連休もあっという間に終わってしまいましたが、連休最後の今日、今まで溜めていた木造住宅の実大振動実験の動画を見てみました。もちろん今までも単発的にはみていたのですが、これだけ長時間見続けたのは初めてです。本当は自分自身で仮説を立てて実験できればいいのですが、実験には莫大な費用と時間と技術者が必要ですのでメーカーや研究機関でもない限り不可能です。
 私は木造住宅の耐震性能に関しては2000年に改正された建築基準法、告示1460号等で一応の完成したと思っています(完成したというより過剰でしょうけど)。最近は合理化がすすみ合板で外周を打ち付け金物で仕口を補強するといった工法が取られています。きちんと設計され施工されていて、老朽化さえしていなければ問題はないと思っています。しかし近年、新築の現場を見て歩くと不思議な設計、不思議な施工が目に付きます。金物の使い方を知らない大工、誤った設計をしていて平然としている建築士、などなど。これでは法律以前にきちんとした家が建つわけがありません。というわけで新しかろうが古かろうが不良の家はたくさんあるわけです。
 今回、映像を点検していて気付いたことは、振動台で与えている大きな地震波を受けた建物は私が想像しているよりも揺れという点では少ないがねじれが非常に大きいのです。建物のバランスは大切だと常々注意して設計していますが、地震時には特に重要で、弱い方向から崩れます。またミニマム模型で実験した結果通り、建物の重さが重いほど、上部が重いほど揺れに弱くなることが見て取れました。また筋かいや合板はねじれによって不思議な挙動をすることも見て取れました。その方向を見ながら仕口の金物は同じ強さであっても、ケース毎に効力が異なるのでは?と思える節もありました。
 制震装置の挙動も面白いものがありました。免震住宅の室内の風景は地震時でも家具は倒れません。しかしMホームのビデオを見ると室内がかなり荒れていることが見て取れます。まあこのビデオの地震波はやり過ぎ!の部分もあるのですが、一般木造住宅の制震が家具の転倒を防ぐような劇的な振動抑制はないことがわかります。他の制震装置も同様です。ただ挙動を詳しく見ていくと上部ほど振動が減っているように見え、木造住宅の弱点ともいえる柱と梁、柱と土台の部分の変形は明らかに減っており、また一部のビデオでは制震なしだと仕口がだんだんゆるみ、複数回の振動によって傾きかけてしまうところを、制震ありだと元の姿に復元しているというものもありました。大地震である程度の室内の乱れは、大きな家具は固定したりすればなんとかなり、建物自身は倒壊を免れ住み続けることが出来る・・・と考えれば制震は有効な選択肢の一つではないか?とも思えます。
 しかし資料が少なく、データも少ないことで、免震とことなり本当に効果的に取り付けられているかは疑問です。一部の制震メーカーやハウスビルダーのなかに取り付けただけという噂もあります。制震の設計には専門の技術や装置に関する詳細なデータが必要です。
 大地震の第一波を防げても、二波、三波が来ます。まあ第一波で倒壊を免れれば取りあえず避難はできます。このレベルが最低線でしょう。しかしできれば二波、三波の時にも倒壊を免れ、住み続ける事ができれば建物としては合格だと思います。そのレベルがどこなのか?それを知りたい今日この頃です。
 
 

投稿者 しろなまず

建築設計やっています。スマホやソフトウェアが好きです。