非木造のビルやマンションは本当に地震に強いのか?

東日本大震災から4年。原発や津波の被害が大きく報道されたため、地震の揺れによる建物倒壊に関して取り上げられることは少なくなりました。木造は未だ取り上げられますが、RC造やS造、ビルやマンションは取り上げられません。

ともすれば安全と思われてしまうそういった建物は果たして本当に安全なのでしょうか?今回は地震の揺れに絞って、しろなまずが現地調査した内容などを含め改めて整理しました。


意外に被害が大きかった東日本大震災のビル・テナント

東日本大震災では戸建て住宅の倒壊が少なかったです。これは事実です。しかし木造住宅の屋根の損傷は大きく、また揺れによる部分損傷もありました。マンション、ビル、テナントなども影響が大きかったです。これは事実です。さすがにあれだけ大きな地震では被害がでない、なんてほうがおかしいのですが、原発や津波のインパクトが圧倒的に大きかったせいで、報道も少なく注目を浴びることも少なかったです。

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震災から約1ヶ月後の4月8日に仙台の街を訪問しました。アーケードには「私たちは負けない」の横断幕がありますが、普段と同じように出勤している感じに見えます。ちなみに前日、最大余震が発生しこの地域のガスは停止しており、ほとんどの店が営業を停止していました。

やっぱりピロティや大開口、巨大なガラスは弱かった

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車のディーラー販売店などは開放性があって素敵ですが、地震には無力です。上側の写真は、比較的新しい建物にもかかわらず、ガラスが全部落ちています。下側の建物も下部が駐車場で地震に弱い建物の代表的な形状ですが、やはり被害が大きかったです。ちなみに周囲の木造住宅などは外見では被害がほとんど見当たらないことから、地震に対しては、やはり弱いようで、基準法を満たすだけでなくそれ以上の設計が必要そうです。

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ガラス張りといえば、ガラスブロックのものは、地震に弱そうです。今回もブロックが落ちた後補修したものを多く見かけました。デザイン性優先では大地震では限界を感じます。

平面的不整形も地震には弱い

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L型などの平面的不整形の建物も地震の弱さを露呈していました。L型の内側に亀裂が入った建物が多く見られました。設計では影響が顕著と思われる場合は、EXPで建物を分離するのですが、そうでもない場合は一体で設計します。しかし地震によっては、このような被害がでてしまいます。

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更に新しめの中高層ホテルですが、L型内側に大きな亀裂が入っていました。仕上げ材も含め、設計での更なる工夫が求められます。

仕上げ材の落下も懸念材料

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仕上げ材の落下による危険も非常に大きいです。看板やガラスだけでなく外壁材も落下します。住宅と異なり高さがあるので、更に危険度が増します。古い建物ほど落ちやすいのは事実ですが、新しい建物でもタイルや外装材が落ちているケースは多く見られました。

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倒壊事例

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実は、倒壊した建物は想定よりも多かったです。ただ全壊した建物が当たり周辺に広がる・・・という風景はほとんどなく、街中に突然倒壊した建物がある、という感じです。写真は鉄筋コンクリート造の建物ですが、完全に倒壊しています。

マンションも安全とはいえない

小さな建物だけでなく、中高層のマンションも完全に安全とはいえません。浦安では新型のマンションが大きな被害を受けていましたし、大型ならではの震災リスクも抱えています。SRC造などで耐震性が高そうなマンションでも近くに寄ると亀裂などが意外に多く、驚きました。

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鉄筋が露出しています。これ以上壊れると危険です。このマンションの場合致命傷にはなっていないのか?住民は住み続けていました。L型の部分はやはり弱いようです。

わずか半日の調査でしたので、細かくは見ることはできませんでした。しかしながら、特に情報もなく行動範囲も狭い割に数多くの被災建物を見ることができたことで、あらためて被害の大きさに驚かされました。震災から4年。このときの調査内容を設計に活かす機会は意外と早く訪れ、より震災に強い建物の設計を目指して研究中です。この事実を風化させずに伝えて行ければ、と思っています。