どちらかというと、大きな設計事務所、ゼネコン、それも意匠か設備、施工・・・その分野では普及し始めたBIM。しかし構造設計事務所ではあまり普及していないのが現状です。小さな構造事務所では人件費率、構造計算ソフトのサポート代金の比率が高く、設備投資に回す資金が限界があるのと同時に、技術的に未整備な部分も多く、また連携面でも不安を抱えている現状では、導入を積極的に進めていって良いものか?疑問が残ります。
ここでは、私の周囲の動き、並びに考え得るBIMの導入についてのパターンを紹介していきます。
ケース1:元請け意匠事務所との連携(こちらはBIMを非所有)
このパターンが一番多いと思います。元請け意匠事務所がBIMソフトを導入していた場合、
SS3(ユニオンシステム)の場合、ST-Bridgeが開発中のため、CSVを使った連携が必要となります。Revitに対してはSS3 LINKでCSVで連携します。ArchiCADに関してはSirCADとSSCアドオンを使い連携します。GLOOBEに関してはSIR-CADを利用してST-Bridgeに変換します。SS3の場合は、Revitとの親和性が一番高いといえます。
Sein La CREA(NTTファシリティーズ総研)の場合、Revitには、同じくSEIN ST-CNV for Autodesk Revitがありますので、こちらで変換、連携します。またSirCADとの相性がいいので、SirCADを使ってのデータ互換、作図が一般的でした。
Bus(構造システム)の場合は、現状だとSirCADを使った方式が一般的です。ST-Bridgeに対応しているため、GLOOBEなどにはそのまま転送できます。
Build.一貫は、最新バージョンでST-Bridgeに対応しています。SirCADにも対応していたのですが、これで対応範囲が広がります。
こうしてみると、構造系に親和性が一番高いのは、Revitであると感じます。SirCADに関しては、構造計算ソフトによって対応する範囲が違うのが難点ですが、構造屋さんでBIM対応する場合は、是非とも持っていたいソフトです。
ST-Bridgeは現状、GLOOBEだけでありますが、今後対応が増えると思われます。各社がST-Bridgeに対応したら、SirCADが不要になるか?といえば、そうではありません。SirCADには構造図への変換機能があります。BIM対応だけでなく図面を作図する補助としてもまだまだ有用なソフトであります。元請け意匠事務所との連携は、最低限、SirCADを持っておくと良いでしょう。そのうえで、連携できる内容を元請け意匠事務所と確認のうえ、意匠事務所へ送信されたデータをどのようにチェックしてもらうか?を確認します。
ケース2:元請け意匠事務所と連携(こちらもBIMを所有)
このパターンは非常に注意が必要です。意匠事務所と同じBIMを揃えれば、データレベルで確認できます。また上位のBIMソフトであればチーム設計も可能であり、設計の柔軟性が高まります。その分ルール作りなど十分に検討する必要があります。また元請けに意匠とのチェックを含め丸投げをされる率が高く、作業量が逆に増える、ということもあります。またBIM所有に関する費用も別に必要になります。元請け設計事務所との仕事率が非常に高い場合は良いのですが、まだそれほどない、とか他の元請けではBIMを使わない場合など、費用対効果はあやしくなります。訓練のつもりならいいのですが、BIMの操作もそれなりに習熟に時間がかかります。意匠事務所であっても利用率が低いシステムなので導入は慎重に検討したいものです。