壁倍率によらない木造構造計算ソフト(46条2項ルート)

木造の構造計算ソフトといえば、KIZUKURIやSTRDESIGN。これらは公益財団法人 日本住宅・木材技術センターが発行する、木造軸組工法住宅の許容応力度設計(以下グレー本)という本に準拠して作られています。既存の木造構造計算ソフトは、基本的にこの本を基準に作られているので、機能差はあれど、できることはだいたい一緒です。壁倍率や木造固有のルールを多数設けることによって、誰でも比較的簡単に構造計算を行うことができるようになりました。

しかし、様々な制約を設けたため、もっと高度なことをしたい場合、グレー本が制約となって自由にできません。木造には、他に木質構造設計規準(以下規準)という古くからのマニュアルがありました。こちらはどちらかというと住宅というより公共建築物のような大きめな建物の設計に使われてきました。また高度な技術者向けという感じで、グレー本は持っていても規準はもっていない、という構造屋さんも多くいました。

今までは任意形状の応力ソフトなどを使って複雑な建物は解析していました。しかしASTIM(アークデータ研究所)が出たことにより木造の複雑な建物の解析を一貫計算で行えるようになり、脚光を浴びてきました。特に2017年秋は、2つのソフトがリリースされることにより、更にグレー本準拠の構造計算ソフトと規準準拠の構造計算ソフトを併用する人が増えると思います。そこで、スムーズに導入できるように2017年9月時点の情報をまとめてみました(10月18日時点の情報を加筆しました。更に10月29日に加筆)

<メニュー>

・法的位置づけ
・できること
・グレー本と2項ルート併用のおすすめ
・46条2項ルート対応の構造計算ソフト
・お勧めの併用組み合わせ

<法的位置づけ>

構造ルート1,2,3といったものではなく、木造の構造計算を定めた建築基準法施行令第46条内の分類による。1項は壁量計算が必須なルート。82条等の構造計算をやっても除外されないという不思議なルート。2項は、1項を適用しないためのもので、基本的には告示1899号の大臣の定める基準によります。この2項ルートは1項が適用されないので、壁量計算は不要。よって壁量に換算できない耐力のものを加算しても問題ないので、普通に構造計算を行えば良い。もちろん構造のルート1,2,3といった分類はその中でも発生する。混同しないように。

<できること>

・解析可能な形状なら、構造計算可能
・よって、スキップフロア、平面・立面的不整形な建物も可能な場合も
・壁倍率がない耐力要素(方杖など)を利用できる
・木造ラーメンも可能

もちろん、形状が複雑になれば、解析も大変になる。中大規模な建物が比較的シンプルな構成になっているのと同様。小規模だからといって勝手なデザインをして解析出来ると思ったら大間違いです。

<グレー本と2項ルート併用のすすめ>

KIZUKURIやHOUSE-ST1などの既存のソフトでも46条2項ルートを問題無く計算できます。これはグレー本のルートに、本来壁倍率が定められていないものを、換算して壁倍率に落とし込んで計算する場合です。一例には、J耐震開口フレームのような、等価壁倍率はメーカーが公表しているものの、大臣認定として壁倍率の認定がないものを使う場合、確認検査機関によっては壁倍率としての使用を認めないことがあります。その場合、46条壁量計算にJ耐震開口フレームの倍率を入れないでクリアさせるか?46条2項ルートで計算するか、どちらかを選択することになります。前者は偏心率の関係で難しい場合がありますが、後者はほとんど何も問題ありません。もちろん無等級の無垢材を使うというのは難しいですが、そもそも集成材やLVLのフレームを使うのに、無垢材にこだわる人は少ないはずです。同じようにK形ブレースなどの高倍率耐力壁を使う場合も応用できます。ただしグレー本は壁倍率7倍までなので、それ以上になると配慮しなければならないことも出てきますので、要注意です。

審査も普通のグレー本の構造計算と変わらないので手軽です。形状にこだわらなければ、無理に2項ルート用のソフトを使うことはありません。

<46条2項ルート対応の構造計算ソフト>

ASTIM (株式会社アークデータ研究所)

構造計算ソフト会社としては比較的新しく2000年に設立された、アークデータ研究所の木造構造計算ソフト。同社はグリッドに制約されない軸によって形状認識する建物一貫構造計算ソフトASCALを開発しており、その木造版としてASTIMを開発しています。従来の壁倍率による構造計算ソフトと異なり、様々な形状に建物に対応しました。魅力的なスペックですが、非常に難易度が高いのでそれほど普及したわけではないのですが、近年、審査機関の形状に対する厳格な審査などにより、この手のソフトの有用性が再注目され、ヘビーユーザーを中心に利用されています。

様々なオプションがあるのも特徴で、通常の木造二階建てに使える壁量計算もオプションとして用意したことにより、日常の簡単な4号建物から、複雑な中大規模の建物までカバーできるようになりました。また基礎も一体として計算でき、ASCALと併用することによって、混構造も可能な柔軟性のあるシステムとなりました。ルート3(保有)に対応することで、更に複雑な建物の設計にも対応しました。先行して発売されていたこともあり完成度や出来ることは後に紹介するソフトを明らかに凌駕しています。今後も進化が楽しみなソフトです。

WOOD-ST(株式会社構造システム)

古参の構造計算ソフト会社。古くからラインナップの広さに定評がある同社も、木造はDOC-Wなど耐震診断以外それほど対応は多くありませんでした。しかし4号建物のHOUSE-4号、構造計算のHOUSE-ST1などラインナップも増えてきて初心者を中心に注目されています。

WOOD-STは、HOUSE-ST1のような簡易でわかりやすい操作性・ユーザーインターフェイスながら、難易度が高いとされる建築基準法施行令第46条2項ルート(壁量計算除外ルート)の立体解析を可能としたソフトで2017年11月1日に発売が決定しました。

形状の柔軟性をある程度犠牲にしたことで、比較的簡単に習熟できるようにしたのがポイントです。それでもスキップフロアは解析できますし、高倍率耐力壁、方杖なども計算できるなど、従来の構造計算ソフトとは、一線を画すものとなっています。また同社のHOUSE-ST1から形状データを引き継ぐこともできるので乗換、併用にも向きます。

もっとも初物なので、初回出荷時は基礎の計算もできません。また小屋組もトラスなどできません。これから、ということで。情報等はメーカーのホームページやなまあず日記style(ここ)や、なまあずソリューションのホームページにて

WOOD-STで学ぶ46条2項ルートの構造計算(PDF:なまあずソリューション)

なまあずショップ楽天市場店では、12月までにご購入の方にクオカードをプレゼント(アンケート回答必須)の独自キャンペーンを実施しております。

SEIN La CREA Premium 木造(NTTファシリティーズ総研)

耐震偽装事件後の最初の大臣認定ソフトとして有名なSEIN La CREAの木造オプションです。ノーマル版ではなく、Premium版のみのオプションというのは非常に残念ですが、64ビット版のPremiumの威力を見てしまうと、仕方がないと思ってしまいます。またPremiumへの乗換キャンペーンも実施しているようです。

SEINのオプションなので、SEINがなければ使えませんが、オプションの強みで、混構造もモデル化できます。もちろん単体の木造もできます。住宅系というよりは中大規模の木造向けのソフトです。SEINは任意形状入力が得意な構造計算ソフトだったのでそのメリットも引き継いでいます。なぜか46条の壁量計算も使えますので、意外と使用できる幅が広そうです。価格が発表になり、定価が30万円と比較的安価(あくまでSEINを持っていればの話)。キャンペーンでは更に安価(20万円)です。同時にCREA本体のキャンペーンもやっているので両方欲しい人もチャンスです。

<お勧めの併用組み合わせ>

では、グレー本系と規準系のお勧めの組み合わせを紹介します。

・お勧め1 KIZUKURI+ASTIM
現状、一番成熟し機能的にも穴がない鉄板の組み合わせです。KIZUKURIも以前に比べ万能ではなく、特に基礎での指摘が多くなってきました。ASTIMがあればそこを補えますし、より高度なことをしたい場合のみASTIMというのが現状だとお勧めです。ASTIMは操作性が良くなったとは言え、簡単な建物でもKIZUKURIのスピーディーさには遠く及びません。検討はKIZUKURIで、本番はASTIMというのも合理的です。

・お勧め2 STRDESIGN+ASTIM
現状グレー本に一番忠実に対応しているSTRDESIGNとASTIMの組み合わせは手軽さでは劣るものの、一番信頼性の高いシステムになりそうです。STRDESIGNは基礎の形状自由度に劣るのでASTIMがあれば補完できます。住宅系はSTRDESIGN、ちょっと凝った建物はASTIMで、と使い分けすることで、木造建物の守備範囲が飛躍的に高まります。

・お勧め3 HOUSE-ST1+WOOD-ST
現状、同一メーカーで両方のソフトを揃えているのは、構造システムだけです。HOUSE-ST1も基礎の計算ができるうえ、実績もあるソフトです。問題はWOOD-ST。新製品で基礎も現状ではできないので、他のグレー本系のソフトと組み合わせるのは不安です。その点HOUSE-ST1なら、データ互換性もありますし、操作性もほとんど同じなので、併用には最適です。他の組み合わせに比べ形状の自由さは劣りますが、使えなくて無駄にお金を使う、ということが一番少ない組み合わせといえます。

・お勧め4 ASTIM単体
ASTIMもグレー本対応をしていますが、新しいグレー本への対応などを見ていると不安になります。が、一応対応していますので、これだけ!で済ますことは可能です。4号も壁量計算ができますし、今まで木造構造計算ソフトをもっていない、という方はASTIM単体でチャレンジする、というのも有りだと思います。

・お勧め5 HOUSE-ST1+SEIN La CREA Premium 木造
まだ、中大規模の木造向けのSEINは住宅はやはり不安です。SEINを元からもっている人には操作が同じなので絶対お勧めですが、これからSEINを買って、オプションも・・・と思うと選択肢から一番に外れてしまう可能性が高いソフトです。そこで組み合わせには価格が安く習熟しやすいHOUSE-ST1をお勧めします。

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